カノン金物店 6

館長 風屋のリオン

さあ、小象童話館のオープンです。館長は「風屋のリオン」。風屋とは聞きなれない仕事ですが、吹きすぎる風の中から透き通った鳥を捕らえる仕事。鳥の代わりに不思議な物語を捕まえてお話しましょう。

NONALNUM-C0B13130

                   6

カノンはそっと店を出て、男の後を追いました。 あれほど父の手紙で禁じられたのに、あの「プルトハイ」がいったい何に使われるのか、自分の心の中にわき起こってくる強い好奇心を、おさえることができなかったのです。  男はしばらくの間、今手に入れたばかりの「プルトハイ」に気を取られて回りのことなどまったく注意を払わない様子でしたが、そのうち「はっ」と我に返ったように立ち止まり、あたりを見回しました。 カノンはあわてて体をかくしました。

男は誰も自分のあとをつけていないことを確認すると、また安心して歩き始めました。 繁華街をとおり抜け、倉庫などが立ち並ぶ、港につづく道をどんどん早足で歩いていきます。男は背が高く足も長いので、すぐに距離を開けられてしまいます。 カノンは倉庫の影に体を隠しながら、やっとの思いでその男の後をつけていきました。男は時々後ろをふりかえるので、少しも油断することができません。 カノンは、ふとそのようにして男の後をつけている自分の後を、また誰かにつけられている、ような気がして振り返りました。でも誰の姿も見えませんでした。 倉庫と倉庫の間に、白い大きな建物がそびえ立っていました。 男はその前に来ると立ち止まり、今度は注意深く周囲を見回し、やがてその建物の中へ姿を消しました。 カノンは、さすがにその建物の中に入るのは気が引けたけれど、ここまで来てはもう行くしかありませんでした。

カノンがその建物に足を踏み入れた瞬間、まるでじっと待ちぶせをしていたかのようにいきなりものすごい力で両腕をつかまれました。二人のプロレスラーのような男がカノンの両腕をがしっとつかみ、ものも言わずに、建物の中の廊下を、引き立てていきました。 カノンはもうだめだ、と思いました。 あんなに父から禁じられたことをやってしまった、これが報いなんだ、と男たちに引きずられながら思いました。 男たちは、カノンを小部屋に連れ込みました。そこは、カーテンのかかった窓と、天井に裸電球がひとつあるきりの、殺風景な部屋でした。 「ああ、おれはここで、殺されるのか」 そう思うと、誰にも告げずに来たことをカノンはたいへん悔やみました。 男たちはカノンをその部屋に置いて、どこかへ出ていきました。 そのまま誰も入ってきません。 どこからか、たくさんの人がざわめいているような物音が聞こえました。 カノンは窓にかかったカーテンを開いてみました。

「あっ!」 広い部屋に、華やかな衣装を身につけた人々が、たくさん集まっていたのです。男も、女もいました。年寄りも子供もいました。 その数は全部で100人はいたでしょうか 華やかなのは特に女たちの衣装でした。赤や、ピンクの糸を中心に緑色の線も美しい、豪華な織物を使ったスカートを子供から大人まで女たちのすべてが身につけていました。 男たちは、みんな白いシャツに白いズボンを身にまとっていました。 その様子は、正装をして何かのお祝いを待っている、という感じでした。そういえば正面には星をちりばめた、旗のようなものが掲げられてあります。 その時、入口のドアが開いて、背の高い男が入って来ました。それはカノンがあとをつけてきた男でした。(つづく)

kanon6

その部屋の女たちはみんな、美しい衣装で着飾っていた

— posted by 風屋のリオン at 01:21 pm  

この記事に対するコメントはありません

<< 2017.4 >>
SMTWTFS
      1
2 345678
9 101112131415
16 171819202122
23 242526272829
30       
 
T: Y: ALL: Online:
ThemeSwitch
Created in 0.0092 sec.
blogBar