カノン金物店 8

館長 風屋のリオン

さあ、小象童話館のオープンです。館長は「風屋のリオン」。風屋とは聞きなれない仕事ですが、吹きすぎる風の中から透き通った鳥を捕らえる仕事。鳥の代わりに不思議な物語を捕まえてお話しましょう。

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部屋の正面には、濃いぐんじょうの地に金と銀の星をちりばめた旗が飾られていました。 そして人々が座っているうしろに、雪をかぶった山々と、その前に雄大に広がる緑の草原を描いたみごとな絵画が、ぐるりと取り囲んでいました。 ふいに陽気な音楽が鳴り出しました。部屋のかたすみで、何人かの男たちが、バイオリンのような楽器を演奏し始めました。 それが合図となって、女たちの踊りが始まりました。クルクル回りながら手を開くと、その手に誘われて、新しい踊り手が加わります。ついには部屋中の女たちが、その踊りの輪のなかに加わりました。それは底抜けに陽気なおどりでした。 誰も疲れを知らないように踊りつづけ、やがて、笑いながらその輪の中から一人抜け、二人抜け、ついに誰も踊り手がいなくなっても、女たちの楽しそうな笑い声と陽気な音楽はまだその部屋に鳴り響いていました。

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雪をかぶった山々とその前に広がる美し草原の絵の前で陽気な踊りが始まった

人の背丈ほどもある、見たことのない弦楽器を抱えた男が登場して、部屋の中央にどっかりと腰を下ろしました。そして弓を取り出すと、それをみごとに引きながらカノンの理解できない外国の言葉で歌い始めました。  それまでざわめいていた人々も、しんと静まり返り、その哀愁を帯びた音楽と共に語られる歌に耳を傾けています。 カノンもそれに耳を傾けているうちに、不思議なことに一度も行ったことのないはずの外国の情景が、ありありと目の前に広がって行くのでした。 広々とした草原を風が吹き抜け、一面の草原に緑の草が風にそよぎ、色とりどりの花が咲き乱れています。大きな荷を背負った人々が行き来し、馬にまたがった男たちが走り回る・・・・・・。 哀調を帯びたメロディーとともに語られる故郷の景色。 老人も若者も、その場にいるすべての人々が、はるかに離れたここから、その故郷の景色を思い描き、再びそこに戻ることを夢見ています。  カノンは、まるで酒にでも酔ったような気分になっていきました。 その時、その民族の最も良いもの、最も美しいものが、時を越え、長い距離を越えてみんなここに集まってこようとしている、と思えたのです。

いつの間にか音楽はやみ、楽器を奏でていた男も姿を消していました。人々は、少しほっとしたように、ざわめきました。 部屋のすみにひげをはやした男が立ち、天井に顔を向けながら手を組み合わせて祈りを始めると、人々はさっと緊張してその男に注目しました。 男の祈りの声は、壁にかけられた雪をかぶった山々に届き、またこだまとなって帰ってくるように、繰り返しいつまでも続きました。そしてふと気づくと、そこにいるすべての人々が男と同じように手を組み、男の声に合わせて、祈りを捧げているのでした。(つづく)

— posted by 風屋のリオン at 10:50 pm  

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