カノン金物店 9

館長 風屋のリオン

さあ、小象童話館のオープンです。館長は「風屋のリオン」。風屋とは聞きなれない仕事ですが、吹きすぎる風の中から透き通った鳥を捕らえる仕事。鳥の代わりに不思議な物語を捕まえてお話しましょう。

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 祈りが終わり、男が姿を消すと、そこに、真空のような空間ができ、その空間は黙って誰かの登場を待っていました。 それは、わずかな時間に過ぎなかったにちがいありません。けれど、10年にも、あるいはこの人たちが待ったという、36年にも思われたのです。

その空間に真っ白な衣装を身にまとい、長い髪を後ろで束ねた女性がゆっくりと姿を現しました。年齢はもう若くなくても、その横顔には高貴な美しさが輝いていました。 今日のすべてのできごとは、この時を迎えるためにあったと思われる一瞬でした。 その女性は、両手にあのプルトハイを捧げ持っていたのです 女性はプルトハイを部屋の中央に置き、少女が運んできた酒びんのようなものを両手で持って、そこになみなみと注ぎ込みました。 そして、ふところから純白のひもを取り出すと、縁に付いた円筒の部分に差し込んだのです。 それは実によどみのない、優雅な身のこなしでした。カノンは驚いてその作業を見つめました。 その人が小さな紙切れを目の前にかざし、祈るようなしぐさをすると、火までもが柔順になったように、ポッ、とともりました。 そして体をかがめて、プルトハイに火を移した瞬間、炎がとうとう命を持ったように、ひときわ大きく輝きました。「おお!」 みんながいっせいに叫びました。 プルトハイは人々の間を火のついたまま回されました。 大人たちは、みんな待ちかねたというように、プルトハイを受け取るとそこに注ぎ込まれた酒を飲み、子供たちの頭にはその酒が振りかけられました。そのたびに、どっと大きな歓声が部屋中にひびき、また酒が注がれ、プルトハイの炎が揺れました。

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白い服をまとった女性がプルトハイを捧げ持って現れた

「プルトハイはこのように使うのか!」 カノンは身を乗り出して、その酒盛りを見つめました。 それは明らかに、何かを祝福している姿に見えました。女の人によってともされた灯りを讚え、それがすべての人々のものになれ、と願っているような熱があふれていました。

突然、今までとは違う叫び声と、男たちの激しくどなりあう声が聞こえました。 その部屋の扉をけやぶって、皆同じような黒い服を来た男たちが、何人もなだれ込んできました。 人々は総立ちになり、男たちはどこかにかくしていた棒のようなものを持って、その黒服の男たちに向かって、殺到してゆきました。  部屋はたちまち戦場になりました。けれど女も、そして子供たちさえも誰一人その部屋から逃げ出そうとはしませんでした。みんな手に持った、わずかな武器でその黒服の男たちと戦おうとしていました。 黒服の男たちは、あとからあとから数を増やしていきました。 ガシャン! 激しい音とともに窓を破って、カノンのいる部屋にも黒服の男が踏み込んで来ました。(つづく)

— posted by 風屋のリオン at 09:16 am  

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