1型糖尿病 Q&A (学校生活での問題について)

小象の会では学校で子供たちと直接接している養護教諭の方たちの疑問に答えて、1型糖尿病の子供たちについてのQ&Aを作成しました。

病気には個別性があり、すべての1型糖尿病の子供たちに当てはまるわけではありませんが、悩んでいる方々の参考にして頂ければ幸いです。

このQ&Aは学校で子供たちと接している養護教諭の皆さんの疑問に答えるためQ&Aの形で一般的なこととして、お答えできる範囲でかきました。病状によって異なることもありますので、お子様の主治医と連携することが重要だと思います。なお、千葉市では、養護教育センターでスクールメディカルサポート事業も昨年から始まったとお聞きしています。糖尿病の児童生徒さんが、学校生活を楽しく過ごされることを願って作成いたしました。

1型糖尿病 Q&A

<>学校生活について

Q.1型糖尿病の児童・生徒が体育や部活はできますか?

A.合併症がある、極端に血糖コントロールが悪いなどの場合を除いて運動制限はありません。健康な子供たちと同じように学校生活を送ることができます。しかし、激しい運動や長時間の運動を行う場合は低血糖を起こす可能性があるので、事前に補食をする、インスリンの量を減らすなどの対応をしたりする場合もありますし、体調の変化に注意する必要があります。インスリン量の変更については学校では管理できません。事前に家族が主治医に相談しておくことが大切です。

Q.1型糖尿病の児童・生徒は食事の制限はありますか?

A. 基本的には食事制限はありません。給食もみなと同じもので大丈夫です。

Q.情報の共有について

A. 学校内でできるだけ情報や対応を共有し、養護教諭が不在の場合、担任の先生方で対応できるようにしておきましょう。

<>インスリンについて

Q. インスリンの保管は?

A.未開封のものは冷蔵庫で保存しますが凍結しないよう気をつけます。開封後は常温保存で大丈夫です。直射日光が当たる窓辺や夏の車内など高温になるところ、冬の屋外など凍る可能性のある所は避けます。

Q. インスリンを打った後の針は?

A.他の人に刺さってしまうことがないよう、自分でキャップをするか貫通しない容器に入れ、注意して持ち帰ってもらいましょう。

Q.インスリン注射を打つタイミングは?

A.基礎となるインスリンを補充するインスリン(持効型インスリン)は1日1-2回、朝や寝る前などに打ちます。食事に対応するインスリン(超速効型インスリン)は食事の直前に打ちます。

Q. インスリンを打つ場所は?

A. 本人とよく相談して教室で打つか、保健室など別の場所で打つか決めましょう。清潔で、落ち着いて打てる場所が望ましいです。

Q.インスリンを打ってから効果が出るまでの時間は?

A. 超速効型インスリンは打ってから10~20分で効果が現れます。打ってから食事までに時間が空くと低血糖になる可能性があります。

Q.インスリンポンプとは

A.インスリンを入れたシリンジをセットして、皮下に挿入した針から持続的にインスリンを注入します。食事の際はボタンを操作して追加のインスリンを注入します。あるいは、食事の時間に合わせて事前に注入量をプログラムすることもできます。水泳や入浴の際には外します。1時間ぐらい外していても大丈夫です。皮下の針が抜けてしまっているのに気づかなかったり、インスリンが流れるチューブが折れ曲がってしまったりして、インスリンの注入が中断すると高血糖になる可能性があります。

<>低血糖の対応

Q.低血糖の症状は?

A .血糖値が70mg/dl以下になると強い空腹感、動悸や不安感、冷や汗などが出ます。これは血糖を上げようとする自律神経のサインで、血糖が低いことを知らせてくれます。

血糖値が50以下に下がると生あくびや眠気、思考力の低下がみられます。脳で使う糖分が足りないサインです。さらに下がると錯乱状態になったり、けいれんや昏睡状態が現れたります。

小さい子供の場合は自分で訴えられないことも多く、また、子供によっても出やすい症状は違います。ご家族によく聞いておくといいでしょう。

Q. 低血糖の際の対応は?

A. 血糖値を上げるための補食をします。ブドウ糖が最も早く低血糖を改善します。子どもが自分で持っているはずですが、忘れたときなどのために保健室にグルコレスキューなどのゼリー状のブドウ糖を用意しておくと安心です。このタイプは低血糖のために意識がもうろうとして飲めない場合でも口の中に絞ってあげれば、頬の粘膜から素早く吸収されるので便利です。粉のブドウ糖を少量の水で練って口の中に塗りつけても構いません

低血糖症状が落ち着いたら、再び下がってしまわないよう、ビスケットやロールパンなど食べるとよいでしょう。さらにチーズやヨーグルトなどのタンパク質も一緒にとれると安心です。すぐに給食が食べられるようなら、食前のインスリンを打たずに食べてもらい、食後にインスリンを打つようにします。どちらにしても、保護者や主治医とすぐに連絡が取れるようにしておくことが大事だと思います。インスリンポンプ使用中の場合は必ず抜去します。

Q.低血糖になりやすいのは?

A. 体調不良等で食事量が少ないとき、激しいあるいは長時間の運動をした後、インスリンを打った後すぐに食事ができなかったときなどは要注意です。補食をしたり、インスリン量を減らしたりして低血糖にならないよう予防しますが、インスリンの量を変更するのは、保護者、主治医しかできませんので事前に話を聞いておきましょう。

 

<>高血糖について

Q.高血糖の症状は?

A.高血糖では喉が渇く、水をたくさん飲んで尿が多くなる、体がだるいなどの症状がありますが、

自覚症状がないことも多く、なかなか気づかれません。この状態から更にインスリン不足が続くと糖尿病性ケトアシドーシスという状態になります。吐き気、嘔吐、腹痛があり、昏睡状態となります。直ちにインスリン投与が必要です。脱水症状になりますが、ブドウ糖の入ったスポーツドリンクなどを飲ませてはいけません。

Q.どんな時に高血糖になりますか

A.インスリンの打ち忘れやインスリンポンプの不具合が考えられます。

ただ、1型糖尿病は血糖のコントロールが不安定ですので、インスリンを打っていても高血糖が続くこともあります。どの程度までは許容できる範囲なのか、家族や、主治医に確認しておく必要もあるでしょう。

Q.通常の体調不良なのか、高血糖、低血糖を区別するにはどうしたらいいのですか?

A. 児童または生徒が自己血糖測定(SMBG)を行えればすぐにわかります。そうでない場合は症状(口渇や頻尿はないか、空腹感や冷汗はないかなど)、食事や運動の様子、インスリン注射を忘れていないか、などからある程度は推測できます。他の原因で体調不良になっている場合には高血糖になりやすく、たとえ食べていなくても少量のインスリンは必要です。低血糖を繰り返すよりも高血糖の方が危険は少ないと言われていますので低血糖が疑われるならブドウ糖を飲ませて様子を観察し、必要に応じて家族に連絡しましょう。

 

<>思春期の子供たちについて

Q、思春期の生徒と児童では違いがありますか?

A.思春期になると活発になるホルモンの関係でいっそう血糖のコントロールが不安定になります。また、心理的な問題からインスリンを打ちたがらなくなったり、また体重増加を気にして極端な食事療法から摂食障害を発症したりすることもあるので、いっそうの見守り、サポートが必要です。

 

平成29年11月 小象の会