腹部超音波検査による内臓脂肪型肥満の診断

メタボリック症候群の発症には、内臓脂肪の存在が大きくかかわっています。
内臓脂肪は各種のホルモンを分泌し、高血圧や動脈硬化症を招きやすい体質を作ることがわかってきました。メタボリック症候群の診断基準には、おへその位置で測った内臓脂肪面積が100c㎡以上であるとされています。

それでは、内臓脂肪のたまり具合はどのように測定すれば良いのでしょうか?
腹部CTを行なって内臓脂肪面積を測定するのが一般的ですが、この方法は外来で手軽に行なうというわけにはいきません。簡便な方法として、メタボリック症候群の診断基準では腹囲測定を行なうように定めています。
内臓脂肪面積が100c㎡以上あるとき、男性では腹囲85cm以上、女性では90cm以上に相当するというわけです。
しかし、腹囲は内臓脂肪と皮下脂肪を一緒に測っていることになります。
皮下脂肪の多いタイプの人では当てはまらない場合もあるかも知れません。

腹部超音波検査による内臓脂肪の測定

超音波装置で上腹部の中央、みぞおちから臍に向かって検査すると、皮下脂肪と腹膜上の脂肪組織を区別し、それぞれの厚さを測定することができます。
腹壁皮下脂肪の厚さをSFT(Subcteneous Fat Thickness) 、腹膜上の脂肪の厚さをPFT(Preperitoneal Fat Thickness)と呼びます。
腹膜脂肪は代表的な内臓脂肪である腸間膜脂肪と同じ発生源を持ち、PFTは内臓脂肪面積と非常によく相関します。
小象の会の田所先生らの研究によりPFT8mmが内臓脂肪100c㎡に相当する事が示されており、CTに比べ外来でも、ベッドサイドでも簡単に、皮下脂肪と内臓脂肪を区別して測定することができます。
また、体重を減らすとPFTも薄くなっていくのが簡単に目で見て確かめられます。
このように、腹部超音波による内臓脂肪の測定は、メタボリック症候群のスクリーニングにも経過観察にも、非常に良い方法と考えられます。

超音波法によるプロープの当て方と超音波像