その2

メタボリックシンドロームが日本人を短命にする、健康寿命を短くする

小象の会 西船内科 篠宮正樹

俺(日本人)は肥満に弱いんだ

男性はウエスト85センチ以上、女性は90センチ以上で、高血圧・高脂血症・高血糖のどれか2つ以上があれば、メタボリックシンドロームと診断する」と述べました。長寿と言われた沖縄県の若中年男性では、肥満・飲酒・高血圧・糖尿病・動脈硬化に関連する疾患により寿命が短くなりはじめています。メタボリックシンドロームのためもあって、沖縄県男性の平均寿命が短くなってきたのです。さらにニホンサン研究(日本-ホノルル-サンフランシスコ・スタディ)と呼ばれる疫学調査によれば、日本人とハワイに移住した移民の二世を比較すると、後者で肥満度・血圧・総コレステロール値・中性脂肪値・血糖値が高く、心筋梗塞・狭心症の発症率が高値でした。日本人も環境の影響を大きく受けるのです。
米国住民で糖尿病の多い集団として
①ピマインディアン
②ヒスパニック(ラテンアメリカ系住民)
③在米日本人集団
が知られています。ピマインディアンは元来肥満も糖尿病も多くなかったのですが、肥満と糖尿病になりやすい遺伝素因があり、アメリカナイズされたファーストフードと運動不足の環境で肥満になり、糖尿病や心筋梗塞が多発したと考えられています。ヒスパニックも日本人も同様なのです。日本人集団において、肥満・高脂血症・高血圧などを多く持つほど糖尿病発症率が高値でした。一方その後の2~3kgの減量で、糖尿病境界型が正常型に移行することも報告されています。

脂肪分解と熱産生に関与する遺伝子で、200kcal程度基礎代謝が低くて済む倹約遺伝子(エネルギーを節約する遺伝子=体質)ともいえる飢餓に耐えうる体質をもつ人が日本人の3分の1にのぼることが知られています。ところがこの脂肪を貯めやすいことが肥満になりやすく痩せにくいことに働くのです。即ち、200カロリー少なくても体重が維持できるのであり、同じカロリーを摂っていても、このような体質でない人より200カロリー多く食べたことになってしまうのです。他にいくつかこのような遺伝子が日本人に多いことが知られ、日本人は、遺伝的に軽度の肥満や耐糖能異常でも合併症を起こしやすいことが分かってきたのです。そして欧米人ほど高度の肥満にならないうちから、糖尿病や動脈硬化をおこしてしまうのです。